|
|
|
目 次
|
| ■口腔外科の守備範囲は・・・ ■口腔癌 ■歯牙腫 ■インプラント ■要注意! |
| ■口腔外科の守備範囲は・・・ 当院院長は口腔外科学講座の元医局員ゆえ、歯科口腔外科も当然標榜しておりますが、すべての口腔外科的な症例を扱えるわけではもちろんありません。 当院で行う外科的処置は基本的に小手術です。炎症(腫れたり、膿をもった感染症)の処置、一部の、のう胞(一種膿の袋)の処置、外傷では歯の脱臼や歯槽骨の骨折、軟組織の縫合など、小児の上唇小帯の切除も行います。で、もっとも頻度の高い処置はやはり埋伏した親知らずの抜歯で、近所の親しい先生からも結構依頼を受けています。 少し前、後楽園ホールで自分がセコンドをしたジムのボクサーが試合中、相手のパンチをまともに顎に受け、骨折してしまったことがありました。彼はそれを知りつつ隠して闘い、けっきょく最後までやり抜きました。(根性みせたが判定負け)そのあとコミッションドクターに事情を話し、そのまま母校の病院に夜駆け込んだことがありました。(病院の飯田橋は水道橋の隣の駅!) 顎の骨折の場合は、上下左右で少しでもずれて骨が付くと、噛み合わせが狂って治ってもちゃんと噛めなくなります。つまり顎の位置を正しく整復し固定しないと、大変なことになるのです。ですから顎の骨折だけは、噛み合わせの素人=お医者ではなく、歯科医がやらないとまずいのです。ただ付けばいいものではない。整形の先生が固定した結果、顎がずれてしまった例は枚挙に暇がありません。あとで歯列矯正する羽目になった例もあります。 口腔外科は歯科医が行うゆえ、外科ではマイナーな存在ですが、ひとりの患者さんを健康な状態に導くという使命の重要度において、事の軽重はまったく変わりません。歯の存在や、かみ合わせ、という特殊性ゆえ口腔外科医のみわかること、できることも多いのです。 |
| ■口腔癌 一般に悪性腫瘍の切除方式とは、腫瘍本体から安全と思われる範囲まで十分なマージンをとるものなので(予防切除)、実際の腫瘍領域より、取ってしまう組織はかなり大きいのです。しかもリンパ節転移があってもなくても、これも基本的には切除するケースが多いです。 ただ、口腔の悪性腫瘍の場合、事情が少々異なってきます。できるだけ取るといっても、見る聞く話す食べる呼吸する等、生きていくためには欠かせない器官が集中している場所でもあるし、脳だってあります。まして人間、顔がなくなったら希望をもって生きていけるでしょうか? 術後の機能障害をできるだけ小さいものになるようにし、さらに人間としての尊厳を保てるだけの外見を回復しないとなりません。 2つある腎臓や肺、独立度の高い子宮、卵巣なんかはそっくり摘出可能なものです。 たしかに心臓や肝臓はないと生きられませんが、眼がなくても、鼻がなくても、顎がなくても一応生きてはいけますよ、それは! でも顔を失うこと=人間の社会的な死ではないでしょうか。だから口腔癌の処置はむずかしいのです。術後の患者の人生を考えると、十分な予防拡大がむずかしい。 で、そうなると、ただでさえ血管とリンパの流れが豊富なのに(転移しやすい)、切除も不十分なわけで再発のリスクが高いのです。再発リスクを減らせば、お化けのような顔になるし、顔を残せば再発の可能性が高いし、ほんとうに悩むところです。 口腔癌の全部がこういった究極の選択を迫られるわけでは、もちろんありません。ちゃんと取りきって、機能も残り、外見も問題ないケースもあります。そのほとんどが、早期発見されたケースでしょう。進行した口腔癌は外から癌そのものがバッチリ見えてしまうだけに、悲惨きわまりない。 口腔外科領域の悪性腫瘍手術は、各器官、骨、筋系、脈管系、神経系に完璧に精通したうえで、非常に複雑で狭く視野の悪い術野での作業になりますので、腫瘍の切除に時間が長くかかります。さらに顎の骨や舌を切除したり、口腔底をぼっこり取ったりしたあとの欠損を補うために、カラダの他の場所から組織を取ってきてそこにひっつけなければなりません。それを再建というのです。 口腔癌の手術は同時に再建手術も伴うことが多いので、場合によっては12時間以上かかることも珍しくありません。 そういう、ものすごいオペを”歯科医”がやってるということ・・これはある意味すごいことですね。 |
| ■歯牙腫 日本歯科大学病院で外来オペがありました。モチロン執刀医は宗村先生。オペ内容は小学生の歯牙腫の摘出。なかなか片方の前歯が出てこないので、レントゲンを撮ってみてそこで歯牙腫の典型像を発見したのです。その後デンタルCTという最新の3Dイメージの撮影を日大放射線科で行い、資料を取り揃えてモノの全貌を把握し、いよいよ今日の午後が執刀日でありました。 歯牙腫というのは、いわゆる歯の良性腫瘍で、歯質の塊が固まったり、ミニミニの歯がバラけたりしたものが顎の中にできてしまうもの。周囲は完全にカプセル(被胞)状の膜に包まれているので、それごと一塊で摘出してしまえば再発もなくおとなしい、予後のいい歯原性腫瘍です。 一度自分もこの”歯牙腫”の摘出オペというのをやってみたかったのですが、そうそうやたらにあるものではなく口腔外科在籍中には症例機会に恵まれませんでした。それで、巡ってきた千載一遇のチャンス!だったんですが、今回だけは見るのも無理だった・・・。なぜなら患児はMY SONだったから。 専門である口腔での疾患、しかも珍しい歯牙腫に子がなっちまうとは、何という皮肉!!そうエグいオペじゃないとはいえ、子のだけは絶対無理・・・。迷わずお願いした宗村先生は腕の冴えを充分に発揮、最小の手術侵襲にて最短の時間で最高のオペをしてくれました。想定されたアクシデントも一切なく、前歯は将来きちんと並びそう。あとは全部うちでフォローできますからラッキーといえばラッキーなんでしょうか?こんなんが発生したからアンラッキーなんでしょうか?ただ子どもというのは、いや人生というのは、どんなヒトでも最初から最後までそうそう順調に行くことってないようですね。生まれて直ぐ死んでしまう子もいるわけで、あいつは歯の疾患になったといっても完全に摘出して治癒できるワケだから、良しと考えて宗村先生と神に感謝します。もしもヤツが将来歯医者になるようなことがあったら、自分の摘出物標本を見てどう感じるのだろうか? |
| ■インプラント 小金井の岡歯科医院の岡一輝先生は、歯科大学では同期で、共に大の音楽好きということもあり、一番仲の良いヤツで、いつもつるんでました。 温厚かつ真面目で几帳面なA型。ご両親とも作家です。酒を愛し、人情に厚く、決してカネや利害では動かぬ、不器用だが誠実な男。卒業してからは全然別の道を歩みましたが、ひょんなことから僕が小金井の物件を紹介すると、彼はそこでの開業を即決してくれました。 彼は顎骨にチタニウムの人工歯根を埋め込むインプラントというのをそうとう勉強しており、今までにもかなりな実績を上げてきました。こういうのは口腔外科出身の自分のほうが専門のようですが、なぜか口腔外科のOBでインプラントやってる先生って意外と少ないんですよ。一応僕もインプラントのライセンスホルダーなのですが、今は普通の歯科診療で手一杯で、そこまでやるユトリをもてない。好都合なことに近所に名医=岡君がいるので、そういう症例は信頼できる彼にお願いしたほうが早いのでそうしてます。 なにしろ石橋を叩いても渡らぬ慎重居士で、常に一番安全かつ最善の方策を模索する、僕と同じ(笑)患者第一優先の男です。うちの悩める患者殿を委ねるに、何ら躊躇すべき点は見当たりません。今までもかなり患者さんを紹介しましたが、皆良い結果が出て喜んでくれています。 そして、じつは自分もインプラントを彼に入れてもらったのです。 堅い干し肉を噛んだら、歯が真っ二つに割れてしまい、いろいろ手を尽くしたのですが結局抜歯に至りました。ムシ歯でもなかったのでショックでしたよ。その後自分でもインプラント以外の選択肢はなく、彼にお願いして歯を失った部分に、一本埋めてもらったのです。 で、これが、オペ中も術後も全然痛くもなく腫れもせず、調子がいいのなんの!患者さんに勧める以上、自分もここで経験してみたのは大きかった。なんといっても説得力がありますよ。インプラントは今や、義歯、ブリッジと並び欠損歯の補綴(おぎなうこと)のかなり有力な選択肢と言えます。 ひところは訴訟沙汰が多かったですが、ああいうのはカネや功名心目当ての、不誠実不勉強な低レベルのDrの仕業で、実際目を覆いたくなるような酷いのも多かったです。今は、材料も術式もほぼ完成の域に達しており、経験と知識のある真面目なDrが、しっかりと症例を選んで、慎重に丁寧にことを進めればまず失敗はないでしょう。 岡君はその一人であると自信をもって言えます。 こういう友人をもてたことを、自分の誇りに思います。 |
| ■要注意! 最近歯科口腔外科を標榜する開業医が多いが、口腔外科在籍経験もないのに堂々と看板を出しているDr.が多いようだ。じつに嘆かわしい。正直言うと口腔外科だけは実際に病院の科で仕事したことないヤツにはまず無理だろう。そんなに甘いものじゃないよ。何しろ現場は常に生死にかかわる決断を迫られているシビアな世界だからだね。講習会行ったり、見よう見まねじゃ絶対にわからないし、最低3年以上のの臨床経験は絶対に必要だ。というのは基本的に病棟や術後の全身管理が分かってないと、外科学的思考ができないからだ。それは一朝一夕に身につくものではない。苦労しさまざまな失敗、経験を重ねて体得できるもので、机上の理屈だけじゃ大工さんになれないように座学じゃ無理。現場経験でないと身につかない世界だ。口腔外科医をかたる開業医は多いが、病院や医局での専門トレーニングを受けてないDr.はまずナンチャッテだと思っていい。患者さんは藁にもすがる思いで専門医だと思って尋ねるのだろうが、ナンチャッテがけっこう多いようなので十分に気をつけてください。通信教育で空手初段なんて無理でしょ。 |